国によって通貨は異なり、その通貨ごとに異なる特徴があります。
ここでは、主要国通貨について、それぞれの特徴を紹介します。
各国の通貨の特徴
米ドル
世界一の経済力をもつ米国の通貨「米ドル」は、国際貿易の取引通貨として使われる「基軸通貨」であり、最も取引量の多い通貨。
流動性が高いため、相場変動は比較的小さめ。「有事のドル買い」と言われたように、リスクオフの局面で、円に次いで米ドルが買われる傾向にあります。
米ドルは各国通貨に与える影響が大きいため、財務長官、FRB議長とした要人発言や米経済指標は世界中から注目されます。
米ドルを見るうえで重要な相場材料が金融政策で、年8回開催されるFOMCは要注目です。
また、米ドルを取引するうえで最も注目すべき経済指標は、毎月第1金曜日に発表される「雇用統計」。サプライズも多く、発表時には相場が大きく動くので目が離せません。
ユーロ
1993年に発足したEU(欧州連合)の下で実施された通貨統合に伴い、1999年から取引開始、通貨ユーロは2002年誕生と歴史は浅いですが、米ドルに次いで2位の取引量を誇ります。
一時は第2の基軸通貨として存在感が高まったものの、欧州ソブリン危機で信頼が揺らぎ、大きく売り込まれました。
EUの金融政策は、欧州中央銀行(ECB)と各国の中央銀行からなる欧州中央銀行制度によって決定され、ECB総裁の発言は世界から注目を集めます。
また、ユーロ圏諸国はロシア、アラブ諸国とも地理的・経済的に深い関係があり、それらの国々で紛争やテロが発生したり、経済危機の懸念が高まったりすると、ユーロが売られやすくなる傾向もあります。
日本円
日本円は、世界最大級の経済を背景とする国際通貨で、取引量も世界3番目に多い通貨です。
超低金利政策を行っている関係で、「低金利で借りた円を売り、外貨資産を買う」ことで収益を得る「円キャリー取引」が活発化し、円安を加速させる場面もあります。
また、戦争・紛争や金融危機などの有事に際して円が買われる「有事の円買い」傾向も顕著になってきています。
特に注目すべき経済指標は、金融政策について話し合う「日銀金融政策決定会合」です。当日に行われる日銀総裁の会見も見逃せません。
英ポンド
英国の通貨ポンドは、第二次世界大戦直後まで世界の基軸通貨でしたが、今は米ドルに取って代わられました。それでも、今なお世界で4番目に取引量の多い国際通貨です。
英ポンドはレート変動が大きく、1日に5円程度の変動もよくあるため、短期間で為替差益を狙うFXトレーダーに人気です。
中央銀行であるイングランド銀行(BOE)内の金融政策委員会(MPC)の動向は、英ポンドを大きく左右するため注目されています。
スイスフラン
永世中立国スイスは、その立場を保持するために強い軍事力を保有しています。
また、経済的にも安定しているため、スイスフランの国際的な信用力は高く、戦争・テロなどの有事が発生した際には、「有事のスイスフラン買い」と、通貨の逃避先になる傾向が強くあります。
カナダドル
米国の隣国カナダの景気は、米国の景気の影響を強く受け、金利政策も同調する傾向が強くあります。そのため、カナダドルは米ドルと類似した動きをします。
石油や天然ガスを輸出する資源国でもあるため、原油価格上昇時に買われる傾向にありますが、同じ資源国であるオーストラリアやニュージーランドに比べると資源依存度はそれほど高くありません。
また、金融システムが安定しているのもカナダの特徴で、大手格付け会社からも最上級の格付けを付与されています。
豪ドル
オーストラリアは、石油・石炭のほか、鉄鉱石、金、ウランなどを世界中に輸出する資源国です。全輸出の5割以上を鉱物資源が占め、輸出全体の3割は中国向けです。
こうした背景から、原油・金・鉄鉱石などの商品価格や、中国経済の影響を受けやすい通貨となっています。
また、豪ドルは高金利通貨としても人気ですが、2015年5月時点の政策金利が2.0%と、他の高金利通貨に比べると若干見劣りします。
大手格付け会社から最上級の格付けを付与されており、健全な財政状況にある国というのも大きな特徴です。
NZドル
ニュージーランドの経済は貿易依存度が高く、GDPの7割を占めています。また、輸出全体の2割強が中国向けとなっており、豪ドル同様に中国経済から大きな影響を受けやすい通貨となっています。
また、資源国通貨と言われるNZドルですが、主要輸出産業は酪農業で、全輸出の3割を占めています。そのため、原油や金などよりも、農産物価格の影響を受けやすくなっています。
また、高金利通貨としても人気のNZドルは、2015年5月時点で政策金利3.5%と、主要国に比べて相対的に高い水準にあります。
南アフリカランド
金やダイヤモンド、プラチナなどの鉱物資源に恵まれ、資源国通貨として位置付けられている南アフリカランド。
高金利通貨としても知られ、2015年5月時点で政策金利は5.75%という高い水準にあります。
尚、南アフリカランドは、ブラジルレアル、インドネシアルピア、インドルピー、トルコリラと共に、高インフレと経常赤字を抱える新興国通貨の総称「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)」と呼ばれており、通貨の暴落等に注意を払う必要があります。
トルコリラ
トルコは、将来の労働人口の増加、地理的に欧州とアジアにまたがり、中東にも隣接した要衝にあることなどから、中期的に経済の高い潜在成長率を有する新興国です。
トルコの通貨トルコリラ最大の魅力は、7.50%(2015年5月時点)という高い政策金利。そのため、スワップ収益を狙う通貨としても人気があります。
一方で、政策金利が高いということはインフレ率が高いことの裏返しでもあり、中長期的に見ると、トルコリラは対先進国通貨で下落基調にあります。また、フラジャイル・ファイブの1つとしても位置付けられているように、通貨の暴落等に注意が必要です。
ちなみに、スワップ収益と高いボラティリティ、また、通貨の値段が安いこともあって、私もトラリピで運用しています。